2013年2月24日日曜日

『草原』25-01(通巻121)号より


咳き込んでる目がまっすぐ  賢太郎
 確かに、咳をしている人の目はまっすぐです。試しに笑みを目に浮かべながら咳をしてみたのですが、無理でした。よく句にしたものと思います。

売女も冷たい冬日  賢太郎
 売女の態度が冷たいのか、身体が冷たいのか、その両方か。拙句に「ほろ酔いの女の冷たい」がありますが、似た景を詠んだもののように思いました。

庭の柿を六個とり孫たちを待つ  福露
 お孫さんが六人か、あるいはご自身のお子さんも含めて六人かわかりませんが、もうすぐ到着です。来たら来たらで大変だと思うのかもしれませんが、楽しみですね。

湾曲した道なりに自転車のわだち  滋人
 自転車の乗り主は、詠み手も知らない誰かでしょう。赤の他人の日常の形跡はいろいろなところに転がっているもので、面白いと感じました。

白髪の母の鼻毛は黒い  ゆ
 鼻毛の方が後から白くなるのでしょうか。てっきり同時進行と考えていました。昔、伸びた白い鼻毛を結んでいるお爺さんと会ったことがありましたが、彼の鼻毛もこうした経緯を経て来たのかもしれません。

一人酒の前掛けは裏だった  かいじ
 この淡々とした滑稽さ。これぞ人の生です。なお、こうした一切の解釈が不要の句、そういう句こそ人びとの心に残っていくのではないかと考えます。