2012年12月29日土曜日

『草原』24-10(通巻118)号より


美人に煙草取られる残暑に春か  馬堤曲
 煙草の箱から取られたのか、自分が吸っていたのを取られたのかわからないが、暑いさなかに春を感じる出来事となった。春はいつだって、不意にやって来る。

朝方のバス停で君が手を振る  馬堤曲
 朝方に別れる際のひとこまか、それとも、朝方に出会った際のひとこまか。どちらの景にしても、なんともほほえましい様子である。かと思いきや、この句の後には、「サヨナラだけは耳に残り」、「何もせず振られる」、「こんな日に雨は必ず降るんだ」の三句が続いて書かれていた。

女のしぐさの首が細い  瞭
 女がどういうしぐさをしていたのかは描かれていないが、作者の意識は女の首へと向かった。その意図していなかった細さに、エロスを感じ取ったようだ。拙句に「意外と太い女の線だ」があるが、これは真逆のパターンである。

油虫たたき殺してなんまいだ  滋人
 油虫からしてみれば、あんまりな話である。なんまいだを唱えれば、いくらでも俺たちをたたき殺していいとでも思っているのか!思っているからこその、この句です。なんまいだ。

屁を放る価値を医者が説く  白兎
 思えば屁にも、なんらかの価値があるはずである。今度医者にかかったおり、思い切ってきいてみたい。

愚かを愚かに死を前にいる  かいじ
 すべての生命が、いつだって死を前に生きている。それが訪れるタイミングは、御仏のみが知っているのだろう。とにもかくにも愚かであっても、人参をぶら下げられたロバのように、何かを求めてもがき進むほかないのだ。