2012年5月19日土曜日

『草原』23-04(通巻100)号より


 老いの痛さを生きる  昭代
 子供の頃、痛みは生きている証拠という話をきいて、そんなことがあるものか、痛みを感じるくらいなら死んだ方がましだ、などと思った時がありました。大人になってようやく、それでも生きたいから生きているということに思い至りました。

 投票日の静かな霜柱だ  福露
 寒い日の朝の風景ですね。投票用紙をもって外に出たら、ざくっという音が足元から聞こえてきます。周りには他の何の音もなく、ただ自分の歩みにしたがって、ざくっ、ざくっと音が刻まれて行く。楽しい朝です。

 枯れ野の先に人ひとり  滋人
 まれにこういう場面に出くわしますが、一体彼がどうしてそこにいるのか、いつもわかりません。子供の頃は、ユーフォーを待っているのではないか、あるいは幽霊ではないか、あるいは死体を埋めているのではないかなどと想像して楽しんでいたものです。

知らんオヤジのカラオケが沁みる  風狂子
 小さな居酒屋などで、たまにえらく上手に歌をうたう方がいらっしゃいます。こちらも心の準備をしていないせいでしょうか、いやに彼の歌が沁みてくるのです。またそういう方に限って、歌のチョイスもうまい気がします。

 乗り遅れて逢瀬延びた  ゆ
 楽しみは後にとっておくものだともいいますので、この乗り遅れは結果としてポジティブに作用したのではないかと思いました。約束の時間に遅れて、怒られてしまったのかもしれませんが、延びた分だけ楽しい逢瀬になったことでしょう。

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